想像妄想空疎空想うそ日記 -4ページ目

まんが読んだ

 週末に某所で古本全品半額セールがあって、いそいそ出かけて読むんだか読まないんだかわかんねーような本を買い込み(でもミュシャ展の図録はあきらめたよ。画集2冊持ってるから。えらい!←えらくない)、帰ってさっそく読んだのはけっきょくやっぱり漫画本。しかし冷静に考えると『もやしもん』もほしかったかも、探すの忘れたぜって全然冷静じゃなくてすっかり物欲のとりこ。読んだことあるのにね。しかし思えば棚からごっそりなくなっている場所も多くて、やっぱりみんな考えることは一緒なのかもしれない。『結界師』も揃えたいような気がしなくもないけど、人気があるようで一冊もなかった。まあ熱が冷めてなければまたいつか。

 というわけで週末もくもく読んだまんが。

蟲師 (1)  アフタヌーンKC (255)  蟲師 9 (9) (アフタヌーンKC)
蟲師 1  2  3  4  5  6  7  8  9
漆原 友紀 アフタヌーンKC

 まとめ買い~。まとめ読み~。
 入手したのは8巻まで。9巻が最新刊らしい。
 この世とあの世の境目が薄い不思議世界。今市子の『百鬼夜行抄』に通じる雰囲気。表紙の質感も似てるしねって、そこが問題じゃないか。
 面白いし、好きな世界観。一気読みじゃなくて少しずつ読むのがよさそう。主人公のギンコが水戸黄門みたいに諸国漫遊して事件事件の繰り返しなので、そろそろ別の軸がほしいような気も…なんて、贅沢だね。でもどこから読んでも楽しめる話ばかりというのはすごいことだなあ。


プラネテス (1) (モーニングKC (735)) プラネテス (4) (モーニングKC (937))
プラネテス (1)
プラネテス (2)
プラネテス (3)
プラネテス (4)
幸村 誠 モーニングKC

 これも面白かったっす。4巻の木星カラーページにはぞくぞくきた。
 ほんとにでかいなこのやろう!!
「さよならジュピタ―――!!」
もうけた。木星シメるなよ…。
 できれば1巻みたいなノリのエピソードをもっと読みたかったなーって、また贅沢なこと言ってみる。『蟲師』とは反対の感想だけど、でもほんとにあと何冊かあればよかったのにと思った。ハチマキが目標目指してあっという間に突っ走って行ってしまった…。
 2050年には火星で人類初ホームランか。実現するのかな。


邪眼は月輪に飛ぶ (ビッグコミックス)
邪眼は月輪に飛ぶ
藤田 和日郎 ビッグコミックス

 見ただけであらゆる生き物を殺す異形の眼を持つふくろうに戦いを挑んだ老猟師と若き巫女。
 一冊完結。
 ベテランが得意分野できっちりまとめた一冊という感じ。
 伝奇じゃ伝奇じゃ。


 あと米村孝一郎の『MISSING GATE』3巻も入手。2巻までホビージャパンから出たあと、別の出版社で刊行され直して3巻が出ていたようだ。でもそのノアール出版社版がAmanzonにないよううう。
 この人の漫画って好きなんだけど、難しくてほとんど意味分からん…。特にこの『MISSING GATE』はSFすぎてぜんぜん分からん…。でも絵柄とか雰囲気とかはなんとなくすごく好きなのだよなあ。
 いちおうAmazonの「米村孝一郎」検索結果。
 読むなら『Possession tracer』 あたりがおすすめかのう。


『うたう警官』読んだ


 
佐々木譲
うたう警官
笑う警官 (ハルキ文庫 さ 9-2)
(右は文庫版。文庫化時にうたう→笑うに改題)

札幌市内のアパートで、女性の変死体が発見された。大通署の刑事たちはただちに現場に向かい、調査が始まった。遺体の女性は北海道警察本部生活安全部の水村朝美巡査と判明。容疑者となった交際相手は、同じ本部に所属する津久井巡査部長だった。やがて津久井に対する射殺命令がでてしまう。調査から外された所轄署の佐伯警部補は、かつて、おとり捜査で組んだことのある津久井の潔白を証明するために有志たちとともに、裏の調査を始めたのだったが……。

角川春樹事務所HP より引用)

 読んだ順番が後先になったけど、『警察庁から来た男』 を2巻とする道警シリーズの第1弾。

 有志が同僚を冤罪から救おうと裏の捜査本部を設置する。
 タイムリミットは一晩!

 組織を守るための犠牲も厭わない上層部。互いの命を預けた経験を持つ仲間を信じて助けようとする者。中立の立場で真実と正義のために動く者。濡れ衣だろうと理解していてもなお、彼の行為を許せない者。全員警察。それぞれの選択に影響を及ぼす、「うたう」――警察組織を売ると見なされる行為。

「佐伯さんは、津久井さんの無実をこれっぽっちも疑っていないようでしたね」
 小島百合は驚いたように言った。
「あなた、疑ってる?」
「いえ、そういう意味じゃありません」
「じゃ、どういう意味?」
「その」新宮は、どぎまぎしながら答えた。「あんなふうに信じてもらえるひとがいるって、いいなって思ったんですよ」


「裏」捜査班のベテラン刑事が、真犯人に迫っていく様子にわくわくした。誰が本当に信用できるのかも分からない中で、予防線を張りまくる佐伯警部補の用心深さにも感服。かっこいいぜ玄人刑事。

 絵になりそうなシーンも多くて(正義の秘密基地!)、映像向きの作品だなと思った。作者のブログには映像化のオファーがあちこちから来ていたとあった。はっきり情報が出ているページを見つけられなかったが、今は角川春樹事務所で映画を作っているところ、なのかな?

 とてもスリリングで一気に読めた作品だが、ちょっと引っかかったのは、やはり「射殺命令」なんて過激な指令が殺人容疑ひとつで出てきてしまうこと。もちろん登場人物たちも「あまりに異常だ」「何かおかしい」という思いから行動を起こしていくんだけど、読み手がこの射殺命令のリアリティを許容範囲と思うかで、入り込めるかどうかが分かれそう。
 平和ボケ日本人であるところの自分も、ここまでは現実にはないのではと思ってしまった。まぁフィクションだからと割り切って楽しんだ。

 いや、でも、面白かった。
 やはり続き物は刊行順に読むべきであるよ。これを先に読んでおけば、『警察庁から~』の序盤で戸惑うことも少なかったろう。

 あと佐伯が聴いてたブレイキーのモーニンはいいッスよ。自分はボビーティモンズの『ジス・ヒア』のが好き。なんて知ったかぶりしてみたり…。知ってる音楽が使われていると、ちょっとたのしい。

モーニン+2 ジス・ヒア
『モーニン+2』(左)
アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ
『ジス・ヒア』(右)
ボビー・ティモンズ


 うたった警官はどうなったか。物語はつづく。


警察庁から来た男


 ところで文庫版の『笑う警官』へのタイトル変更は、いまいち納得できないなあ。『うたう警官』のままか、どうせ変えるならずばっときっぱり容赦なく完膚なきまでに変えればよかったのに。だって、作中の誰ひとり笑う状況じゃないし、あの人が連発するおやじギャグは寒すぎだし…。

うたう警官
笑う警官 (ハルキ文庫 さ 9-2)
佐々木譲
角川春樹事務所

関連記事:『警察庁から来た男』

かなたよりきたるしらせ

オキナグサ


 はるか以前に卒業した母校から、頼みもしないのに同窓会報みたいなものがときどき送られてくる。
 いつもは斜め読みして「ケッ」などとつぶやきつつ投げ捨てていたのだが、先日のその会誌に、学生のころに講義を受けていた先生の訃報が掲載されていた。
 まあもう教えはとっくに記憶の彼方なのだけど、なかなか印象的な先生だった。いつも15分以上は遅れて、奥まった教室に到る長い廊下をサンダルをゆーっくり引きずる音をたててやってきた。教室に入ってまずするのは、酸素吸入(たぶん)の管を鼻に装着することで、講義中もすこーすこーと響く音がまるでダースベーダーのようであった。先輩から聞いた話では、講義中にボンベの操作を誤って爆発させたという伝説もあるという。
 授業では文献用の古い外国語の基本文法みたいなのを習っていたのだけど、訳文も負けず劣らず古文的だった。とくに憶えているやつでは「なんじ、我に牛2頭与えたまえかし」とかいうのがあった。何語だよ。

 恐らくあのたぐいの教官がたいていそうであるように、ものわかりの悪い生徒に教えるよりは自分の研究に時間を使いたいというようなことを言っておられた。退官してからは望むような生活を送られたのだろうか。

 ともあれ、佐藤先生のご冥福をお祈りいたします。